フィジカル・レビューD ブラックホールは存在しない

銀河系の近傍にある渦巻銀河M33の中心に、巨大ブラックホールは存在せんことが確かめられましたとよ。

銀河中心に巨大ブラックホールが存在するちう説はあちこちで述べられ、それば確認する観測結果もあちこちで得られています。そいやったら、銀河M106には太陽質量の3900万倍のブラックホールがある、またIC2560には同じく280万倍のブラックホールがある(天文ニュース465)ちう証拠が得られましたとよ。ごくこん前、うちらの銀河系の中心にも巨大ブラックホールが存在することば確認する観測ばしたとマサチューセッツ工科大学が発表しよるとよ。こんような観測から、銀河の中心には太陽質量の数万倍から数億倍にのぼるブラックホールが存在するとの考え方が広まったとよ。銀河中心にあると考えられるこんように巨大な質量のブラックホールば、超巨大ブラックホール(Supermassive Black Hole;SMBH)とよかます。

そしたら、どいでんがの渦巻銀河の中心に超巨大ブラックホールがあるのかちうと、必ずしもそうやなかようばい。アメリカ、ニュージャージー州、ラトガーズ大学のメリット(MerrittD)たちは、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、M33の中心にSMBHは存在せん。ブラックホールがあるとしても、せいぜい太陽の3000倍程度であるちう発表ばしよるとよ。

ブラックホールは光すら出ることができん天体やろから、そん存在ば直接に見ることはできません。したがって、そこに落ち込む物質の出すX線ば観測する、あるいはそん周囲ば回る恒星や円盤の回転速度ば測定するやらなんやらの間接的証拠ば積み上げることで、そん存在ば推定しかいなか。メリットたちは、1999年2月に、ハッブル宇宙望遠鏡の撮像スペクトログラフ(Space Telescope Imaging Spectrograph;STIS)によって、これまでに得られとったものより10倍以上の分解能で8561Aのカルシウム吸収線付近のスペクトル観測ばおこなか、それによって中心ば取り巻く星の集まりの視線速度やそん分散ば調べたとよ。ばってんくさそこには、超巨大ブラックホールがある場合に期待される、中心に近付くにつれて視線速度が急激に増加する状況は認められませんやったとよ。観測データば解析した結果得られた結論は、仮にブラックホールが存在するとしても、そん質量は太陽のせいぜい3000倍しかいなかちうものやったとよ。こうして、どいでんがの銀河に超巨大ブラックホールがあるとは限らんけんことが結論付けられたとよ。

ブラックホールの蒸発

古典物理学においてはブラックホールはただひたすら周囲の物体ば飲み込み質量が増大してゆくだけであるとよ。ばってんくさ一般相対性理論に量子論ば加えた理論ば開拓したことで知られるホーキングは、ブラックホールから物質が逃げ出して最終的にブラックホールが蒸発する可能性ば指摘したとよ。そん理論は以下の通りであるとよ。

量子力学ではエネルギーと時間は不確定性関係にあり、時空の微小な領域で粒子と反粒子の対生成・対消滅が絶えず起こっとるとされるとよ。ブラックホールの地平面の近傍でこんような仮想粒子対が生成すると、それらが対消滅する前に、片方の粒子(反粒子)がブラックホールの地平面内に落ち込み、もう一方の反粒子(粒子)が遠方へ逃げ去ることがあるとよ。反粒子(粒子)の運動は粒子(反粒子)が時間軸ばさかのぼって運動しとることと等価やけん、粒子(反粒子)がブラックホールから時間軸ばさかのぼりながら地平面に達し、地平面ば通り抜けると時間軸ば下りながら運動するとみなせるとよ。すなわち粒子がブラックホールから地平面ば通り抜けて飛び出してきたように見えるとよ。

こん粒子の放出はブラックホールの地平面上で確率的に起こるため、巨視的にはブラックホールがある温度の熱放射で光っとるように見えるとよ。こればホーキング輻射と呼ぶ。こん輻射によってエネルギーば失うと(エネルギーは質量やけん)ブラックホールの質量は減少するとよ。ホーキング輻射の温度はブラックホールの質量に反比例するため、通常の恒星質量程度のブラックホールではこん効果は知ったこつかできるほど小さい。ばってんくさ陽子質量ぐらいの微小なブラックホールではこん量子効果は知ったこつか出来なか。ホーキング輻射で質量が減るとさらにこん効果が強く働いて輻射の強度が増え、加速度的に質量とエネルギーば失い、ケツには爆発的にエネルギーば放出して消滅するとよ。これがブラックホールの蒸発であるとよ。こん蒸発のケツのプロセスがガンマ線バーストとして観測されるとする説もあるとよ。うちらの宇宙が閉じた系でなか限り、超長期的に見ればどいでんのブラックホールは蒸発すると考えられとるとよ。

一方で、こんようなブラックホールの蒸発が起こるとすると、次のようなパラドックスが生じるとよ。質量 M のブラックホールに質量 m の物体が吸い込まれた後、ホーキング輻射によってブラックホールが質量ば失ってもいっかい質量 M に戻るちう過程ば考えるとよ。ここで、ホーキング輻射は完全な熱放射であるため、そん輻射は各時点でのブラックホールの質量から決まる温度以外にまるっきし特徴ば持たなか。よって、最初に吸い込まれた質量 m の物体がトマトであってもオレンジであっても、最終状態は「質量 M のブラックホール+質量 m 分の光子」ちうまるっきし同じ状態になるとよ。だけん吸い込まれた物体についての情報は完全に失われてしまうとよ。ばってんこれでは初期状態が異なっとるにもかかわらず同じ最終状態に達することになり、量子力学の時間発展のユニタリ性と矛盾するとよ。こんパラドックスは「ブラックホールの情報喪失問題」と呼ばれて長年議論されてきたとよ。

これについて、2004年7月21日にホーキングは「ブラックホールに吸い込まれた物質が持っとった情報はブラックホールの蒸発に伴ってなんらかの形でホーキング輻射に反映され、外部に出てくる」ちう新説ば発表し、従来の自説ば修正したと。

巨大質量のブラックホール

天の川銀河の中心部にあるブラックホールは、太陽の200万倍の重力ば持った巨大な存在であるとよ。1995年には、銀河M106の中心に太陽質量の3600万倍の質量のブラックホールがあることが確認しんしゃっとぉ。同様にして、これまでにえらいたくさんの銀河の中心部に106-8太陽質量の大質量ブラックホールの存在が確認しんしゃっとぉ。

ばってんくさこんような大質量ブラックホールの起源についてはあまり良く分かっていなか。1970年代後半に考えられとったシナリオは、巨大なガス雲が一気に収縮してブラックホールば作るちう説、高密度の星団の中心部分が重力熱力学的に進化してブラックホールとなるやらなんやらといった説やったが、いずれも理論的・観測的な困難があったとよ。しかも、通常の恒星進化の果てに生み出される恒星質量クラスのブラックホールと銀河中心に見られる大質量ブラックホールの中間的な質量ば持つブラックホールがこれまでまるっきし発見されず、両者の間に関係があるかどうかも不明やったとよ。

ばってん1999年から2000年にかけて、うちの研究者グループによる電波やX線での観測から、M82 銀河の内部に太陽質量の1000倍程度のブラックホールがあるらしいことが初めて明らかになりよったとよ。これば受けて現在、以下のような大質量ブラックホールの形成シナリオが考えられとるとよ。

銀河どうしの近接遭遇や衝突やらなんやらによって銀河内部で爆発的な星形成(スターバースト)が起こり、これによって若くて密度の高い星団が大量にできるとよ。こんような星団には重い星が大量に含まれるため、高密度な環境ではこんような星同士が合体してさらに大きな星となり、ますます合体しやすくなるちう合体不安定ちう過程が進行するとよ。こうして作られた重い星の寿命はえらく短いけん早い時期に超新星爆発ば起こし、太陽の数十倍から100倍の質量ば持つブラックホールが誕生するとよ。これらの合体によって103太陽質量程度の中間質量ブラックホールが星団内にでき、こんような星団がいくつも銀河の中心に向かって沈む。沈む途中で星団自体は潮汐ぶち壊すされ、中間質量ブラックホールが銀河中心にたまり、互いに合体して大質量ブラックホールとなる、ちうもけんある[2]。

2005年にはチャンドラX線観測衛星によって M74 銀河にも約10000太陽質量ちう中間質量ブラックホールが発見されており、今後観測データが蓄積されることでこん仮説の妥当性が検証されていくものと考えられとる

ブラックホールの成長

ブラックホールに落ち込む物質は強力な潮汐力によってぶち壊すされ、ブラックホールば取り巻いて回転する降着円盤ば作るとよ。降着円盤の質量に比べてブラックホールの質量が十分に大きければ降着円盤ば構成するガスは質点の周りのケプラー運動に近い差動回転ばするとよ。こんため降着円盤のガスは粘性による摩擦ば受けて加熱され、X線やγ線ば放出するとよ。いっぺんに角運動量ば失って次第に中心へ落ちていき、ブラックホールに飲み込まれるとよ。ブラックホールのシュヴァルツシルト半径はブラックホールの質量に比例するため、ブラックホールが物質ば飲み込んで質量が増えると事象の地平面(シュヴァルツシルト面)の半径も大きくなるとよ。

ブラックホール理論

ブラックホールは物質の進化のある枝の一端ば成しとると言ってもよい。ビッグバンにより始まった純粋なエネルギーやった宇宙が、やがて素粒子ば生み出し、素粒子が結合して原子となるとよ。宇宙初期には水素やヘリウムといった最も軽い元素が作られたと考えられとるとよ。

軽元素からなる雲は重力によって収縮し、中心部の圧力と温度が上昇して核融合が始まり、原始星となるとよ。核融合が始まると熱的な膨張力が発生して重力による収縮に拮抗する効果ば生む。熱による膨張と重力による収縮がつりあった時点で星は安定するとよ。また、核融合によって放出される光子は星の表面から放出され、星は主系列星として明るく輝き始めるとよ。

恒星が核融合で水素ば使い果たして主系列星の時代ば終えると星は次の段階に変っとるするとよ。主系列星の後にどのような過程ば経るかは星の質量によって違ってくる(詳細は恒星進化論ば参照のこと)。

質量が太陽程度から太陽の数倍までの星の場合には、主系列星の後に赤色巨星の段階ば経て、星の外層部分ば恒星風として周囲に放出して惑星状星雲ば作るとよ。星の中心部分は核融合でできた炭素・窒素・酸素やらなんやらの元素からなる白色矮星となり、こんまま次第に冷却して一生ば終えるとよ。
質量が太陽の約8倍よりも重い星の場合は、巨星に進化した後も中心部で核融合によって次々に重い元素ができ、最終的に鉄からなる中心核が作られるとよ。鉄の原子核は結合エネルギーが最も大きいため、これ以上の核融合反応は起こらず、星の中心部は熱源ば失って重力収縮するとよ。収縮が進むと鉄の原子核同士が重なり始め、陽子と電子が結合して中性子になって、やがては星の中心部がほとんど中性子だけからなる核となるとよ。こん段階では核全体が中性子の縮退圧によって支えられるようになるため、重力収縮によって核に降り積もる物質は激しく跳ね返されて衝撃波が発生し、一気に吹き飛ばされるとよ。これが超新星爆発であるとよ。超新星爆発の後には中性子からなる核が中性子星として残されるとよ。残った中性子星が光やX線ば激しく放出するパルサーとなる場合もあるとよ。
質量が太陽の約20倍以上ある星の場合には、自己重力が中性子の核の縮退圧ば凌駕するため、超新星爆発の後も核が収縮(重力崩壊)ば続けるとよ。こん段階ではもはや星の収縮ば押しとどめるものはなんも無いため、重力崩壊はどこまでも進む。こうしてシュバルツシルト面より小さく収縮した天体がブラックホールであるとよ。

ブラックホール理論

ブラックホールの理論的可能性については、ニュートン力学の時代に先駆的な着想があったとよ。1796年にフランスの政治家・数学者ラプラスは、アイザック・ニュートンの万有引力の理論ば極限まで推し進めて、「物質が十分に集積すれば、そん重力は光の速度でも抜け出されんほどになるに違いなか」と予測したとよ。また1783年にイギリスのジョン・ミッチェルも同様の論文ば発表しとるとよ。

現代的なブラックホール理論は、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論が発表された直後の1916年に、理論の骨子であるアインシュタイン方程式ばカール・シュヴァルツシルトが特殊解として導いたことから始まったとよ。シュヴァルツシルト解は、球対称で自転せず、電荷ば持たなかちう最も単純な仮定で一般相対性理論の厳密解ば導くことで得られたとよ。シュヴァルツシルト解には、原点の特異性と、シュヴァルツシルト半径における特異性があるとよ。座標の取り方で後者の特異性は除去されることが後に分かったが、原点の特異点は物理的に残されるとよ。これがブラックホールであると認識されるようになりよったのは、1960年代のことであるとよ。

1930年代末、ロバート・オッペンハイマーは、当時の物理学界ば賑わせとった中性子星の議論の中で、恒星が崩壊してできる中性子星の質量には上限があり、超新星爆発の後に形成される中性子の核の質量がそん上限よりも重い場合、中性子星の段階にとどまることなくさらに崩壊するであろう、と、重力崩壊現象ば予言したとよ。ばってんくさオッペンハイマーはここまで研究ば進めたところで、原子爆弾開発ば目的とするマンハッタン計画に参画することとなり、彼はロスアラモス研究所の所長に任命されたとよ。それ以来、彼のブラックホール研究は途絶えたものと思われるとよ。

1963年、ロイ・カーが軸の周りに一定の角速度で回転するブラックホールについての厳密解ば導いたとよ。カー解は、ブラックホール唯一性定理により、軸対称定常・真空かつ無限遠平坦ちう仮定のもとでのアインシュタイン方程式のただ一つの解であることが示されており、ブラックホール脱毛定理(無毛定理)の描像とあわせて、物理的に形成されるブラックホールの最終段階と考えられとるとよ。1973年に京都大学の冨松彰と佐藤文隆が発見したトミマツ・サトウ解はカー解ば歪めたもけん裸の特異点が存在するとよ。そんため、物理的には生じなかと考えられとるとよ。

なお、ブラックホールちう名前は、ジョン・アーチボルト・ホイーラーが1967年に命名したとよ。

ブラックホールとは

ブラックホールの周囲にはえらく強い重力場が作られるため、ある半径より内側では脱出速度が光速ば超え、光ですら外に出てくることが出来なか。こん半径ばシュヴァルツシルト半径と呼び、こん半径ば持つ球面ば事象の地平面(シュヴァルツシルト面)と呼ぶ。また、こん天体ば「ブラックホール」(黒い穴)と命名したのはアメリカの物理学者ホイーラーであるとよ。ブラックホールそれ自体は不可視やけど、ブラックホールが物質ば吸い込む際に降着円盤ば形成するけん、そこから放出するX線やガンマ線、宇宙ジェットやらなんやらによって観測が可能であるとよ。

ブラックホールは単に元の星の構成物質がシュヴァルツシルト半径よりも小さく圧縮されてしもうた状態の天体であり、事象の地平面の位置になんか構造があるわけやなか。よってブラックホールに向かって落下する物体は事象の地平面ば超えてそんまま中へ落ちて行く。実際には、有限な大きさば持つ物体は強力な潮汐力ば受けるため、事象の地平面に到達する前に素粒子レベルでぶち壊すされてしまうと考えられる[1]。一方、ブラックホールから離れた位置の観測者から見ると、物体が事象の地平面に近づくにつれて、相対論的効果によって物体の時間の進み方が遅れるように見えるとよ。よってこん観測者からは、ブラックホールに落ちていく物体は最終的に事象の地平面の位置で永久に停止するように見えるとよ。いっぺんに、物体から出た光は赤方偏移ば受けるため、物体は落ちていくにつれて次第に赤くなり、やがて可視光から赤外線、電波へと移り変わって、事象の地平面に達した段階で完全に見えなくなるとよ。

ブラックホールの中心には、密度、重力が無限大である特異点があるとよ。そいでは時空の性質ば記述するアインシュタインの一般相対性理論が成り立たなかため、特異点の性質そん他ば従来の物理学ば用いて議論することはできん。